ファンタジー探偵と学園祭
今のところ、何も起きていない……。そうアイリーンが思ったその時だった。

素早い動きで空中を何かが飛んだ。その物体が飛んでいった先にはーーー。

「危ないっ!!」

アイリーンは走り、アリスの背中を押す。アリスは床に倒れ、アイリーンも同じように倒れた。

次の瞬間、大きな音を立てて、天井からぶら下がったシャンデリアが床に落ちた。ガラスが割れてあちこちに飛び散る。

「大丈夫か!?」

先生が次々と駆け寄る。会場は一気に騒がしくなった。

「……私は大丈夫です。少し失礼します」

アイリーンはそう言い、足早に会場の二階へと向かった。二階の通路に行くと、物体が飛んできた場所にボーガンが落ちていた。それは……盗まれたペローのボーガンだ。

会場の壁には、鋭い矢が突き刺さっている。もしも、誰かに当たったら……。そう思うとアイリーンの背筋がゾッとする。

近くの窓が開いている。犯人はここから逃げたのだろうか?でもここは二階だ。アイリーンは考える。

「アイリーンさん」

後ろから名前を呼ばれ、アイリーンは振り向く。先生の一人が心配そうな顔で言った。

「やっぱり心配なので、医務室に行ってくれる?アリスさんは先に医務室に行きました」

「……はい」

そう返事をしたものの、確かめたいことがあったのでアイリーンは医務室ではなく、教室に向かった。



教室に行ったアイリーンは事情を話し、矢が飛んできた時間帯に一人だった生徒を集めて話しを聞いていた。

アリバイがなかったのは、四人。ピーターパンと、ティンカーベルと、一寸法師と、金太郎だ。

「僕は飾りのリボンが無くなったので、新しいものをもらいに行っている途中でした」

そう一寸法師が言う。
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