ファンタジー探偵と学園祭
「俺はトイレに行ってた」

金太郎が言う。

「僕は借りたハサミを返しに行ってた」

とピーターパン。

「私はパーティー会場に先生を呼びに向かっていました」

ティンカーベルがそう言い、アイリーンは腕組みをして考える。

犯人は窓から侵入と逃走をした。普通の事件ならもっと現実的に考えるが、この学園で起きたことなのだから犯人が空を飛んで逃げていったと考えてもおかしくはない。

そう考えているアイリーンの肩を、誰かが叩いた。

「はい」

振り返ると、アイリーンの知らない先生が困った表情で立っていた。

「グリム先生!」

ティンカーベルが言う。

「医務室の先生だよ」

アイリーンが訊くまえに、一寸法師が教えてくれた。

「アイリーンさん…。医務室に来てと言ったのに、何故こんなとこにいるんですか?」

グリムがアイリーンを見つめる。その目には心配の色があった。

「すみません。でも、私は大丈夫です」

そう言うアイリーンを、グリムはひょいと抱き上げた。アイリーンもさすがに動揺する。

「先生!下ろしてください!」

そう言うアイリーンを無視して、グリムは医務室へと歩いていった。



医務室でアイリーンは怪我をしていないか、グリムと同じく医務室の先生であるシンデレラに診てもらった。

「大丈夫みたいね。もう制服、着てもいいですよ〜」

「…はい」

シンデレラは『アイリーン』と書かれた紙に今日の日付と「異常なし」と書いた。

「その紙は何ですか?」

制服を着ながらアイリーンが訊ねると、シンデレラは教えてくれた。
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