覚悟はいいですか

再びソファに座らされ、「ちょっと待ってて」と言って、礼は部屋の奥へと消える
私はできるだけ冷静に客観的に話せるよう、気持ちを落ち着けようと思うがうまくいかない
気づけば恐怖に呼吸が早くなる、そこで深呼吸をして……と繰り返していた

しばらくすると、ティーポットとカップを乗せたトレーを持ち、腕にひざ掛けを掛けて礼が戻ってきた

「冷えるといけないから」

ひざ掛けを使うように言ってから、二人分の紅茶を注ぐ

手渡されたカップに口を近づけると、緊張していた私は優しいダージリンの香りに少し落ち着きを取り戻した

「ありがとう」

と素直に言うと、隣に腰掛けた礼はにっこりした
紅茶の中でもダージリンのセカンドフラッシュが好きなこと、覚えててくれたのかな?

その笑顔と気遣いにまた少し癒されて、私は2年前のこと、それから私の身の周りに起こったことをぽつりぽつりと話し出したーーーーー


《side礼》

家に着くまでも着いてからも、紫織の顔色はずっと冴えないままだ
俺はいろいろ聞きたい気持ちを隅に置いて、先ず彼女を温め休ませてやりたいと思った

男は堂嶋みたいな奴ばかりでないと、少なくとも俺は君を守るから安心していいと分かってほしくて、とにかく甘やかす。下心も全力でねじ伏せ、紫織の気持ちを守ることだけを考えて動いてたら、少しずつ彼女の表情が和らいでほっとした

あとは一晩寝て、大丈夫そうなら明日話を聞こうと思ってたのに、彼女は自分から聞いてほしいと言い出した
手が震え、目も潤んでいるのに無理しないでほしいと思ったが、その目の奥に強い意志の光を見た気がして、俺は紫織の話を聞くことにしたーーー

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