覚悟はいいですか

「おや、なんでしょう?」

穏やかに聞かれたので、私は思いきって今日ここに来た目的と私の本音を話す

「申し訳ないんですが、私は今、結婚する意志はございません。大変ありがたいお話ですが、もし結婚するとしても、堂嶋さんがおっしゃるような家庭に治まるつもりも一切ございませんので、どうかこのお話はなかったことに…」
「君は私と結婚するんだ!!」

いきなり大声で怒鳴られた。ビックリして見れば、公彦氏は鬼のような形相で立ち上がり、私の腕を掴んで顔を近づけ、低い低い声で話し出す

「断れると思っているのか?君は私と結婚する、これは決定事項だ。私の決めたことに逆らうな!むしろ貴女は結婚して堂嶋になれる。こんな名誉なことはないだろう?逆らったら君の会社もどうなるか、わからないぞ!
おとなしく私の言う通りにすればいいんだ!」

目の前に血走って見開かれた目があって物凄く怖い。でもここで頷いたら二度と逃げられない。私は震えながら必死に声を絞り出した

「いいえ、なんと脅されようと私はあなたと結婚しません」

「このっ!まだ逆らう気か!!」

バシーンッ!

いきなりの衝撃に何が起きたかわからないまま、気づくと私は椅子から転げ落ちていた。口の中に鉄の味がして左頬が燃えるように熱くジンジンと痛み、私は堂嶋氏に手加減なくはたかれたのだと理解した
本能で逃げなければと思うが、脳に振動が残り、目の前がグラグラして起き上がれない

すると堂嶋氏は私に馬乗りになり、片手で胸ぐらを掴んで、繰り返し頬を叩き続けた
大声でわめき続けているが、痛みとショックで何を言っているかわからない

次第に意識が遠のいて目の前が暗くなり、次に目覚めたのは病院のベッドの上だったーーー

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