覚悟はいいですか
「…始めはね、信じられなかったの。8年前に友達にしか思えないって言われたから…
それからずっと、礼は私のことなんて何とも思ってない、むしろ迷惑だったんだって
思ってた」
「…ごめん」
「ううん、謝らないで
礼は背負っているものがたくさんあるの、今は解るから。
ペンションで好きだって言われて、ほんとは私、嬉しかったんだと思う。
でもお兄さんや会社も捨てられないって聞く度に、やっぱり二人の未来はない気がして、それなら最初から友達のままでいいと思って気持ちを封印していたの。
おまけに私はいろいろ面倒な女だし、礼に迷惑かけられないでしょう?」
「紫織、俺は…っ」
言いかけた礼の口に片手を当てて、先を塞ぐ
お願い、最後まで聞いて
「でも礼は堂嶋のことも、呪いのような不幸話も全部聞いて、それでも離れないって言ってくれた。こんな話、聞けば諦めるって思ってたのに…フフッ
諦め方忘れちゃったなんて言うんだもの」
クスクスと笑いながら礼の口から手を離す
すると彼は目を細め、離れた手をそっと掴んだ
「だから、ね。私のほんとの気持ち、伝えたいって思って」
「うん、教えて」
優しい微笑み、私の大好きな礼の笑顔に、8年前のように心臓が飛び跳ねて目頭が熱くなる
やっぱり本心を告げられる嬉しさに心が震える…
一度大きく深呼吸して、礼を見つめ、20歳の私に8年分の想いを重ねて口を開く
「Merci de m’avoir attendue.
(メルシー ドゥ マヴォワ アトンドゥ)
『私を待っていてくれてありがとう』
私を守ってくれて、話を聞いてくれて
私の全部を受け止めてくれてありがとう
好きです。礼、貴方のことが大好きです。
これからもずっと好きでいさせてね」