覚悟はいいですか

「紫織、大丈夫?」

頭の上に礼の声が響く
強引なくせに、ちゃんと私を気遣って聞いてくれることに、またキュンとしてしまう

その時、気付いた
押し当てた胸の鼓動が、私と同じように早い!

声はとても落ち着いてるけど、
もしかして礼も同じくらい緊張してる?

そう思ったら、とてつもなく礼が愛しくなってしまってーーー

頬に手を伸ばし、私から唇を重ねてた
礼はこれまでにないくらい目を大きく見開く

礼の首に腕をまわして抱き着き
耳元に口を寄せてそっと囁く

「私は礼のこと、最初から怖いなんて思ってないよ」
だから大丈夫だよ、と告げると私を抱く腕の力が強くなった

肩に顔を埋め、大きく息を吐く

「はあ~、紫織、俺を殺す気?」

え、何故そうなるの?

「人が一生懸命抑えてるのに。そんなこと言われたら俺、もう限界なんだけど!」

額と額を合わせると、真っ赤になって私を睨むようにして言う
目の前に濡れたような瞳がきらめいて初めて欲望の火を灯した

その熱い瞳に見つめられ、"食べられる"と思うと怖くなる
けど同時にそうされたい衝動が湧き、体の奥に甘い疼きが生まれた

「!っんな顔して…くそっ!」

いきなり噛みつくようなキスをされて、甘い疼きが体の中心を駆け上がる
背中を支えていた礼の手が髪に空気を揉み込むようにしながら、反対の手で腰をさらに引き寄せる

苦しくて息を吸おうと開いた口から舌が差し込まれ、口づけはますます深くなる

徐々に体の力が抜けてきて、与えられる快感のほかはもう何も考えられない

はあ、何これ、気持ちいい……

「んっはああ…」

自分のものと思えない甘い声が出て、恥ずかしさで体がさらに熱くなる

礼の肩がぴくっと動き、舌の動きが一層荒々しいものになった

私はされるがまま、礼にしがみついているのがやっとだ

永遠に続くかと思われたキスは、チュっと大きなリップ音をさせ、唐突に終わる
額を合わせて、荒く息をつく礼の声がした 

「紫織っ、これ以上はダメだ、押さえられなくなる…」

苦しげに言いながら浅い呼吸を繰り返す

でも
見つめる彼の目に欲望の火がまだ明滅しているのが見えて、私の中で何かがはじけた…

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