覚悟はいいですか

礼は一度目を閉じ、長い睫毛を振るわせながら息を吐く

まだ赤い顔のまま、そっと上げられた瞼の下から、熱で潤んだような瞳が再び現れる

「こんなに煽って…もう容赦しない。紫織の全部、もらうから」

もう止められないよと呟きながらそっと私の腕を引く

「れ、っんんっ…」
腕の中に閉じ込められ、返事をする前に再び唇が重なった

礼の手がうなじから肩に、肩から背をなぞるように這い回ると、上衣が肌を滑り落ちた
素肌に触れられたところから熱が点り、体中に広がっていく

キスは唇から頬、こめかみ、鼻の頭と移動して、額に落ちてからまた唇に戻り、何度もそれを食むように擦り合わせ撫でられる

押し倒されながら、ますますの深まる口づけに頭がぼぅっとしてきた…

「すごい可愛い……蕩けそうな顔してる」

枕元に手をつき、そう言って妖艶な笑みを浮かべる

ただでさえ整いすぎた人の溢れるような色気に充てられ、体がさらに熱くなった

礼はもどかしそうに上衣を脱ぎ捨てると
顔の横に両手を置き、私をじっと見下ろしている
私も礼を見つめ返す

月光を浴びる礼の身体は艶めかしく、程よく引き締まった腹筋と腰骨のラインにぞくぞくする
彫像のような美しい体に、ため息をこぼしながら
手を伸ばしてそっとなぞる
礼は一瞬息を詰めて瞳を細くしたーー

その瞳にじっと視られただけなのに、呼吸はどんどん早くなる
礼は紅い唇を舌でペロリとなぞり、ゆっくりと降りてきた……

天使の口づけは耳から首筋へ降り、鎖骨のくぼみを舌がなぞる
私は幸せでふるふると震え、礼が与えてくれる快楽に思わず背中を反らす

無数のキスと愛撫に融けた体を貫かれた時は、さすがに痛くて涙が出たけど……

初めてだと気付いた礼は、繋がったまま、さらに優しいキスをくれた

「俺だけが幸せじゃ嫌なんだ。痛みも全部忘れるくらい気持ちよくしてあげる」

そう言って、その手と舌と唇で、ずっと優しく慰めてくれた

礼の肩越しに、真珠のように白く輝く月が見える
月光を浴びながら、礼は耳元で私の名前を何度も囁く

やがて言葉の通り、痛みより優る幸せに激しく揺すられながら、真っ白な光に包まれていく

愛する人と結ばれた幸福感に眦からこぼれ落ちる雫を感じて、


私は意識を手放した……
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