覚悟はいいですか
《side 礼》
「紫織、気持ちいい?」
「ふぁ、んん!……気持ちいい…もっと…」
「クスッ、思ってたより大胆だね、ちょっと妬ける…」
「れ、い?…何言って・・・ああ!」
月の光を反射する紫織の肌は艶めかしく妖しく光り、
しっとりと手に吸い付いてため息が出る
その一方で俺の心は嫉妬で暗く焦がれていた
彼女の反応は素直で、感じやすい体は、時に大胆に俺を翻弄する
その姿が嬉しい反面、どこの誰が初心だった紫織を拓いたのか、
こんなにも乱れるよう躾けたのか…
埒もない考えに後悔が募る
でも悔しいが過去は替えられない
俺がそいつを上回ればいいことだと、嫉妬すら劣情に変えて執拗に攻めた
……だから、彼女を貫いた瞬間、紫織が顔を歪ませ涙をこぼすのを見て、俺は芯から驚いた
「いっ・・・!」
「紫織!?…え、初めて……!」
やはり初心だったのかと嬉しさに顔がほころぶと同時に、
嫉妬に狂って苦しい思いをさせてしまったと後悔する
全力で動きを止め、これ以上痛みを与えないように堪えていると
小悪魔はさらに俺を煽ってくる
「…大丈夫だから。お願い…やめない、で…
礼の全部、ちょうだい……」
「!!」
苦しいだろうに、笑顔を見せて頷く彼女をギュッと抱きしめ、深く、深くキスをする
紫織の手が背中に回って俺にしがみついてきた
「俺だけが幸せじゃ嫌なんだ。痛みも全部忘れるくらい気持ちよくしてあげる」
唇を離さずに告げれば、紫織の眼からきれいな雫がこぼれてこめかみを流れ、
髪に吸い込まれていった
目尻から溢れるそれを吸い取り、顔じゅうにキスの雨を降らす
月の光を浴びて真珠のように輝く肢体を、宝石を扱うように優しく触れて愛おしむと
次第に力は抜け始め、やがてもどかし気に体を震わせる
可愛い…たまらなく可愛いくて、これ以上もうどうしようもない…
「紫織?」とかすれ声で聞けば、こくんと頷き首に手を回して唇を重ねる
誰も触れていない彼女の中に始めは浅くゆっくりと、徐々に激しく俺自身を刻み込んだ
紫織は高みに昇ったまま、意識を手放し、白い眠りに落ちていった……
追うようにして自身も果てた時、今まで感じたことの無い幸福感に包まれる
…やっと手に入れたーーー
「もう離さないよ。一生、全部、俺のものだ…」
独占欲にまみれた本心を、そっと打ち明ける
大切な彼女を包み込むように胸に抱いたまま、
俺はつかの間のまどろみへ落ちて行ったーーー