覚悟はいいですか
礼は私の両肩を掴み、目を逸らさずに訴えるようにして話し出した
「途中までは確かに喜んでいてくれたんだ。でもふいに黙り込んで。
しばらくして急に、その子だけはダメだって。
理由を聞いても答えないし、堂嶋の事なら心配ないって言っても、違う、とにかくダメの一点張りでわけが解らない。
あんなに頑なな母さんは初めてで、俺もどうしていいか…。
とにかくこの件は一度保留にしようと父さんに諭されてほとんど強引に帰らされたけど……
っくそ!」
めずらしく言葉を荒げ、枕を拳で叩いた
両手をクシャっと前髪に突っ込んで目を閉じたまま俯く
いつも前向きで自信いっぱいの彼が落ち込んでいる
それだけ彼の中でお母様の存在は大きいのだろう
「礼……」
私は自分が拒絶されたことより、礼の心が傷ついていることに胸が痛んだ
『礼と礼の家族の絆のために、身を引いて彼を諦めよう』
ふと私に染みついた後ろ向きな声が囁きかける
今までなら迷わず従っていたであろう声
そこにもう一人の私が問いかけた
『でも、礼は諦めないよ?紫織、どうする?』
そう、礼は諦めないと言ってくれた
私も本当は諦めたくない
だったら答えは決まっている