覚悟はいいですか

「紫織、寝ちゃった?」

「…ううん、でも寝そう…」

ゆっくり閉じる視界に、礼が隣に滑り込む姿が映る

枕に片ひじをついて横向きになり、私の髪をすくように頭をなでる

気持ちよさに甘えたくなって、彼の胸に身を寄せた

「礼?お仕事の電話じゃなかったの?」

「うん、まあ仕事。
ただ会社に行かないとできないことだから、明日出勤になった」

「え?!明日?」でも明日は…

「大丈夫。昼過ぎに終わるから約束の時間には間に合うよ
だけど店には一緒に行けなくなっちゃった
むかつくけどジョルジュと行ってもらえるか?」

むかつくって…

「それはいいけど…何時に出るの?」

「いつも通り、だよ」

話しながら腰回りを撫でられて、体の力が抜けてきた
礼はそれに気づくと、体を重ねながらゆっくり覆いかぶさり、私を下に組み敷く
頬に手を添え、色っぽく細められた眼に妖しい火がともる

「紫織…」

甘い声と共に礼の唇が私のそれと重なった

背に腕を回して受け入れると口づけは一段と深くなる
大きな手が首筋から肩へ、そして胸へと撫でながら動く
肌に触れた端から波紋のように快感が広がっていく

私の体の隅々まで知り尽くした礼は、優しく触れながらも確実に私を追い詰め、
体中に紅い花を散らした

高まる熱に瞳が潤み、眦から零れ落ちていく

「紫織、可愛いよ…愛してる」

「私も。愛してる」

互いの存在を確かめるように抱きしめ合った



明日は試練の日
そしてこれからも様々な壁があることだろう

でも礼と二人なら乗り越えていけるはず
きっと乗り越えてみせる

大切な人たちに、二人が一緒にいることを認めてもらいたい
そして一緒に幸せになりたい




やがて交わる互いの熱は、二人を溶かしてひとつになる

愛し合う私たちを少し欠けた月が見ていたーーーーー
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