覚悟はいいですか
2、襲撃
「さすが海棠様ですね、よく似合ってますよ」
鏡越しに関根さんが微笑んでいる
「ありがとうございます。関根さんのおかげです」
今日のために礼が選んだのはAラインの濃紺のワンピース
フレアがたっぷりとってあり、そのままだと体に沿ってストンと落ちるシルエットなのに
動くとふわっと裾が広がって、上品でいて可愛らしい
小さな子が着たらクルクル回りながら広がるスカートに大喜びしそう
髪はハーフアップにして耳を出し、シンプルなひと粒パールのイヤリングをつける
同じく真珠色のパンプスを履いて、きちんとお礼を言うために立ち上がる
鎖骨の間でトゥシューズのペンダントが揺れた
La petite siréne2階のフィッティングルームを出ると、ソファに座ってコーヒーを飲んでいたジョルジュさんが振り向いた
「お待たせしました」
「紫織さん、とてもきれいですよ。まさしくpetite siréneだ!(人を惑わす美女)」
さすがフランス生まれ。女性をほめるのも上手ですね
「フフッ、Je vous remercie.(ありがとうございます)」
「では、行きましょうか?礼様を待たせたら怖いですからね」
そう言って手を差し出してくれた
少し高めのヒールで階段を降りるのは心許なかったので、ご厚意に甘えることにする
ジョルジュさんのスマートなエスコートで1階に降り、エントランスで手を離す
「車を取ってきますのでここでお待ちください」
「はい」
ジョルジュさんは頷くと、一人で外に出た