覚悟はいいですか

2、襲撃


「さすが海棠様ですね、よく似合ってますよ」

鏡越しに関根さんが微笑んでいる

「ありがとうございます。関根さんのおかげです」

今日のために礼が選んだのはAラインの濃紺のワンピース
フレアがたっぷりとってあり、そのままだと体に沿ってストンと落ちるシルエットなのに
動くとふわっと裾が広がって、上品でいて可愛らしい
小さな子が着たらクルクル回りながら広がるスカートに大喜びしそう

髪はハーフアップにして耳を出し、シンプルなひと粒パールのイヤリングをつける
同じく真珠色のパンプスを履いて、きちんとお礼を言うために立ち上がる

鎖骨の間でトゥシューズのペンダントが揺れた



La petite siréne2階のフィッティングルームを出ると、ソファに座ってコーヒーを飲んでいたジョルジュさんが振り向いた

「お待たせしました」

「紫織さん、とてもきれいですよ。まさしくpetite siréneだ!(人を惑わす美女)」

さすがフランス生まれ。女性をほめるのも上手ですね

「フフッ、Je vous remercie.(ありがとうございます)」

「では、行きましょうか?礼様を待たせたら怖いですからね」

そう言って手を差し出してくれた
少し高めのヒールで階段を降りるのは心許なかったので、ご厚意に甘えることにする

ジョルジュさんのスマートなエスコートで1階に降り、エントランスで手を離す

「車を取ってきますのでここでお待ちください」

「はい」

ジョルジュさんは頷くと、一人で外に出た

< 166 / 215 >

この作品をシェア

pagetop