覚悟はいいですか

もうすぐ礼と会える
そう思うだけで心が逸る

これから織部会長の待つホテルへ向かい、彼を紹介する

大丈夫、礼ならきっと会長も認めてくれる
やっとやっと、普通の恋人になれる…

そう思うと自然と口元が綻びそうになり、慌てて手で隠して口を引き結んだ


その時、入口のドアが開いた
ジョルジュさんが来たと思ってみると、全く知らない女性だった

軽く会釈をするが、なぜかじっと私を見ているのでいたたまれなくなる
すぐに店員さんが気づいてその方を案内して行ったから、どうやらお客様のようだ

La piete sirenではゆったりと服を見てもらうために、顧客とその紹介者のみを予約制で受け付けると聞いた

おそらくあの人は次の予約客で、私がいたから訝しんだのだろう

お店に迷惑が掛かってはいけないから、表に出てジョルジュさんを待とうと決め、
店の人たちに見送られてドアをくぐった

歩道に出ると木枯らしが吹き抜け、思わずコートの襟を立てる
もう秋も終わりに近く、吹く風は鋭い冷気を含んでいた

ジョルジュさん、早く来ないかな…

そう思いながら車の来るであろう方向を伺っていると、
目の前の道路に黒塗りのワゴン車が急ブレーキの音をさせて停まった

いきおいよく開いたスライドドアから、屈強な外国人が数人飛び出してくる
咄嗟に危険を感じ、怖くなって早足で駐車場へ向かおうとした時、目の前にスーツの男性が立ちはだかる

え、誰? 私、囲まれた?!

「紫織さん!」

声がする方を向く
ジョルジュさんと目が合った瞬間、彼の後ろから手が見えた
何か金属の棒のようなものを握って振り上げている

「ジョルジュさん!!」

必死に声を張り上げた時、金属棒が彼の頭に向けて振り下ろされた!
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