覚悟はいいですか
《side 礼》
紫織に覆いかぶさる男の襟をひっつかみ、壁に投げつける
ずるずると崩れ落ちたそいつに飛び掛かろうとして、後ろから羽交い絞めにされた
「落ち着け、礼!それ以上はお前がすることじゃない!!」
「離せ!離してくれ、友和さん!」
「そいつにお前が殴る価値なんかねえ!それより紫織ちゃんを!!」
その言葉にやっと我に返り、振り向く
駆け寄って顔をのぞき込むと、紫織はホッとしたような笑顔を浮かべた
その笑みに一瞬安堵したが、首筋に残る輪のような跡と頬の腫れに、怒りと後悔が押し寄せる
「遅くなって、ごめん。怖い思いさせてごめん。ごめんな」
そっと抱き寄せて、痛々しい傷跡に触れるだけのキスを落とす
紫織は俺の腕の中で弱々しく首を左右に振った
「礼のこと、信じてたから、絶対来てくれるって。私のこと、諦めないんでしょ?」
予想外の言葉に思わず苦笑いすると、紫織は安心したように意識を手放した
「紫織、君を取り戻せてよかった」
乱れた髪を梳くようにして撫で、額にキスをする
フッと息を吐き……
説明を求めるべく、そこにいるはずのない人に目を向けた