覚悟はいいですか
会議室の空気がピンと貼りつめる

うん、その視線、言いたいことはよくわかります!
こんな格好の私が、なぜ自分達と同列にいるのか、ご不満いっぱいってことだよね!?

今日の私はいつもと同じ黒縁メガネ。かろうじてベージュのスーツのパンツがタイトスカートになっているくらい?
まあ、外見は後で何とでもなるんだから、気にしないでと言いたい!

視線を麗奈へとむけると、それまで笑い含みだった顔を咳払いひとつで引き締め、話を続けた

「今、話した通り、今回のレセプションはただの周年記念のお祝いではありません。
目的は事業開発部と企画部、営業3課が進めてきたホテル・リゾート産業に対する自社製品の売り込み及び、新製品の共同開発の道を開く足掛かりとすることです。
そのために私達秘書課とここにいる山口さん、片平さんで、ゲストと社員を効率よく顔合わせし、ビジネスチャンスを作り出すことが求められます」

それから私の隣に立つと、肩に手を置く

「知ってる人もいると思うけど、山口さんは2年前まで秘書課にいて、華の剣として活躍していました。
今回その力を存分に発揮してもらい、パーティーを成功させるために、満を持して復帰することになりました。
皆さんも彼女からたくさんのことを学べると思います。ぜひこの機会をこれからの自身の糧としてください。」

物は言いようだなあ、麗奈のよく回る口に半ば呆れるが、そんなことはおくびにも出さず、一歩出て挨拶をする

「経理2課の山口です。大仕事に緊張しきりですが、微力を尽くしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
隣に居ります片平は今日から次姫として、皆さんとともに修行に入りますので、どうぞご指導の程、お願いいたします。」

秘書の何人かの目つきがきつさを増した。彼女たちが今の次姫だろう。久美子も察したようだが、花のような笑みを浮かべ一礼して挨拶に代える
うん、肝が座ってるね。これなら大丈夫そうだ

一通り、自己紹介と挨拶が済み、話はパーティーの具体的な進行に移った。当日までのスケジュール、会場について資料が配られ、それぞれ担当者から説明がなされる

最後に渡されたゲストの資料を見ながら、私は眉を顰める
麗奈を見るが涼しい顔で
「目を通しておいてください」
としか言わない

冗談でしょ?
これじゃあ、今回のパーティーで何の役にも立たないじゃない…

私は当然のことを要求すべく手を挙げた



< 84 / 215 >

この作品をシェア

pagetop