二番目でいいなんて、本当は嘘。
ふたりのあいだに、しばし沈黙が漂う。

薫さんと一緒にいるとき、いつもドキドキして、切なくて、でも、その何倍も幸せな気持ちになれた。
いまのような穏やかな空気感は初めてかもしれない。


「あのあとすぐ、婚約は解消しました」
「どういうことですか?」
「そのままの意味です」


そのとき、私の脳裏によみがえったのは、かつての一紗の姿だった。
浮気相手との間に子供ができたから、別れてくれ、と土下座してきた元恋人。

もしかして、薫さんもあのときの一紗と同じように、婚約者に頭を下げたのだろうか。
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