二番目でいいなんて、本当は嘘。
私の怪訝な表情を読み取ったのか、薫さんが「もともと、口約束程度のものだったんです」と続けた。
「僕はこれまで、自分の道を自分で決めることなどありえないと思っていました。自分の血を引いた子供ではないにもかかわらず、育ててくれた父親への恩に報いないといけないと。でも僕は、初めて自分が欲しいもののために父に頭を下げました。結婚したい人がいる。だから桐生の名を捨てたい。そう言ったら、父は笑ってこう言いました。『私たちの孫に、桐生の名前を継がせないつもりかい?』って」
さっきの電話口で、清香さんは「私たち親世代の過ちを子供に繰り返させない」と言っていた。
愛する人と結ばれず、それぞれの人生を歩むことになった薫さんの両親とすずの母親。
けれどその後悔はずっと残っていて、いつか償いをしたいと願っていたのだそうだ。
すずが東京での就職を決めたことをきっかけに、3人は再会した。
時間の経過は、思いがけなく3人の気持ちをほどいてくれた。
それぞれが、今は幸せな道を歩んでいる。
政略結婚ではあったが、薫さんの両親は今では仲睦まじい夫婦となっているし、すずも、すずの母親も、地域のみんなが家族みたいなものだ。
不幸の連鎖は子供たちには引き継がないようにしよう。
桐生家のしきたりはあるけれど、それよりも本人の意思を尊重しよう。
それが、数年前に親世代が交わした約束だったらしい。
「僕はこれまで、自分の道を自分で決めることなどありえないと思っていました。自分の血を引いた子供ではないにもかかわらず、育ててくれた父親への恩に報いないといけないと。でも僕は、初めて自分が欲しいもののために父に頭を下げました。結婚したい人がいる。だから桐生の名を捨てたい。そう言ったら、父は笑ってこう言いました。『私たちの孫に、桐生の名前を継がせないつもりかい?』って」
さっきの電話口で、清香さんは「私たち親世代の過ちを子供に繰り返させない」と言っていた。
愛する人と結ばれず、それぞれの人生を歩むことになった薫さんの両親とすずの母親。
けれどその後悔はずっと残っていて、いつか償いをしたいと願っていたのだそうだ。
すずが東京での就職を決めたことをきっかけに、3人は再会した。
時間の経過は、思いがけなく3人の気持ちをほどいてくれた。
それぞれが、今は幸せな道を歩んでいる。
政略結婚ではあったが、薫さんの両親は今では仲睦まじい夫婦となっているし、すずも、すずの母親も、地域のみんなが家族みたいなものだ。
不幸の連鎖は子供たちには引き継がないようにしよう。
桐生家のしきたりはあるけれど、それよりも本人の意思を尊重しよう。
それが、数年前に親世代が交わした約束だったらしい。