幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
「…ママと私は本当にそっくりだね
今までありがとう。
良い娘になれずごめんなさい。…これからもなれそうにないや」
「環、待ちなさい!ねえ!」
「バイバイ」
ママは私が欲しい言葉をくれないだけで、本当は私を愛してくれてると信じたかった。けれどママと私が過ごした年月は、ずっと前から壊れてたんだ。
アパートを出た後、どこをどう走ったのかはあんまり覚えてない。気が付けば昔のアンルージュの近くの川辺に寝転んでいて、空が真っ赤な夕焼けだった。少しの間眠っていたのかもしれない。
誰かとすれ違う度ににぎょっとした顔で見られ、家に帰って鏡を見て納得した。
「そういえば自分のこと殴ったっけ?
…だから寝てたのかな」
右頬が紫色に膨れてる。口の横には血のこびりついた跡。さすがに自暴自棄過ぎたかもしれない。
やることがないから丁寧に手当てして、それも直ぐに終わってしまった。
……本当に何もやることがない。だって仕事はクビになったし、ママとはさよならをしてきたし、私を救ってくれた涼介を裏切って逃げてきてしまった。そんな私にふさわしい、何もない孤独。
暇をもて余して部屋の掃除をすると、充電器に差したばかりの携帯が鳴った。
「あれ、山下さん?」