幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
「こんの、お前なっっ!『あれ?』じゃねえだろ!!
今まで何してた?どうして連絡のひとつも寄越さねぇ?心配するだろうが馬鹿が!!」
電話に出た瞬間に鼓膜が破れそうなほど怒られてしまった。耳がキーンとなったので逆の手に携帯を持ち替える。
「もしかして電話してくれてました?」
「もしかしてなんて悠長なもんじゃないくらいな!そちらは電源切ってたみたいですからぁ?わかんないかもしれないですけど?」
「怖い怖い…すみませんって。
落ち着いたらご連絡しようかなって思ってたんですけど」
「その『落ち着く』のはいつなんだよこのボケが!」
怒涛の勢いで怒られ続け、正座で「はい」と「すみません」を繰り返す。怒鳴る山下さんは山下さんのお父さんに瓜二つだった。そう言ったらもっと怒られそうだけれど。
「どうせアレだろ?『涼介の家を出てすぐ山下さんに連絡するなんてぇー。私ってそんなビッチじゃなないしぃー。そういうのってぇー』とかそんなん考えてんだろ?」
「いえあの…ご連絡したらご迷惑かけそうなんで。せめて仕事でも見つけてから…」
「アホか貴様、こっちはお前の生き死にを心配してんだよ!!迷惑なんか既に最大限かけられとるわ!」
返す言葉もなく、翌日には『絶対バックレんなよ』の脅しつきで呼び出される。
「…で、何なん?その顔。格闘家に転職でもした?」
「ええとそれが」
涼介のノートのことだけは内緒にして説明すると、山下さんが目を点にしてる。
「自分で自分を殴って気絶ってお前…人間のポテンシャル軽く越えてるな」
「いえ、それほどでも」
「褒めてねーよ馬鹿!」
怒られつつも、山下さんがいつもの調子でいてくれることにどこかほっとしていた。優しくされると申し訳なくなるし、あの雨の日のような山下さんだったら、どう話していいのか分からない。
「とにかくだな、こっちはお前が辞めた分の仕事の穴埋めしなきゃなんねーし、会社じゃコンプライアンス対策だなんだと煩わしい会議ばっか増えるし」
「すみません、本当に」
「さらに涼介が腑抜けだから、その皺寄せもくるだろ?」
「…」
私のわがままで決めたことだから、涼介を心配する資格なんてない。私を救う役割から解放された方が涼介だって自由になれるわけだし…
でも、涼介の会社での様子を聞けばキリキリと胸が痛んだ。
「お前が暗い顔してても何もなんねーよ。心配ないぜ、かけられた迷惑分はきっちり体で返して貰うからな」
「はい……へ?体?」