幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
時々は、山下さんや小夜子さんとアンルージュの製品についてリモートで打ち合わせをしている。山下さんが無茶振りばっかりしてくるけど、それに応えられた時はちょっとだけ前進したような気がした。
「私…ここにいると、自分の事をぐるぐる考えないでいられるんです。
どうやって生きて良いかも分からなかったのに…ここでは私なんかに感謝してくれる人もいて」
「そりゃそーだろ、力仕事全部やって、ジジババに携帯の使い方まで教えてやってんだから、感謝もするだろ。みんなの孫みたいだってよ。親父が言ってた」
リモートで接続したパソコンには苦笑いしてる山下さんの顔。背景はオフィスだけれど、涼介の姿は見当たらない。
いつか涼介とまた笑って話せる時がくるだろうか。
「あ、そうだ明日、工場に勤怠管理システムの業者呼んだから話聞いといて。」
「え!?システム…?パソコンの話を私が?無理ですよ無理無理」
「今時タイムカード手書きしてるとかありえないだろ?何とかしないといけないわけ。
お前が分かんないものジジババが使いこなせるわけないんだから、使い勝手をよく聞いとけよ。よろしくな」
「待っ」
そこでプツっと回線が切れる。無茶振りに応えたらまた次の無茶振りだ。
「もーーー!山下さんはいつもいつも!」