幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
ここでお世話になる間に少しだけ季節が移り、毎日雪が続く頃には女子バスケの大会に向けて部員さん一人一人に合わせた個人練習のメニューを作っていた。


アンルージュは新店舗の運営も起動に乗って、山下紡績産業で受ける仕事の量が日増しに増えていく。

新しくパートや正社員で働く人が増えて、工場はいつもに増してフル稼働。年末年始のお休みも例年より減らしている。


「今日こそは休んで病院行かないと腰痛ひどくなりますよ?お正月で病院閉まっちゃいますからね。
聞こえてます?山下さんのお父さーん」


「長い!わかっとるわ!!」


「わぁすみませんっ」


「『お義父さん』でいい」


イテテ…と腰を擦りながら山下さんのお父さんが車に乗っていった。やっと休みを取ってくれて良かった。忙しい工場の中でも一番無理してるのは社長のお父さんなのだ。



「あははっ。悪いな、ツンデレ親父の世話まで。」


振り返ると山下さんが車を駐車場に止めていた。車から降りるとリラックスした私服姿で、都会的な印象に見える。


「山下さん!こっち帰って来てたんですか?
お久しぶりです… って、オンラインでは会ってるんで変かもしれないですけど」


「そんな事ねーよ。久しぶりだな、川原環。
…会いたかった」


はにかむような笑顔を向けられて何だか調子が狂う。最近は仕事の話ばかりしてたし、怒られてるイメージが板についていたせいかもしれない。マフラーを首にかけてくれて、思わず視線が泳いだ。


「…ありがとうございます」


「どういう体感温度してんだよ。ジャージだけじゃ風邪引くぞ」
< 129 / 146 >

この作品をシェア

pagetop