幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
涼介の優しく微笑む目が笑顔のまま固まり、じっと目を見ると、不自然なくらい横を向いてしまった。
「一足飛びにそこだけはっきり返事するか…?ホント環は読めない奴だな」
右手は胸の位置で涼介の手のひらにちょこんと乗ったまま、指先が熱い。横を向いた涼介の赤くなった耳が見えてやっと気が付く。
「うわ違っ…!そうじゃなくてだから」
「もう離さないって言ったろ」
ばっと手を離そうとすると指の間に涼介の指がすべり込んだ。
ドキドキも照れるのも指先から全部伝わってしまいそうなのに、その手は涼介の顔の前まで引き上げられ、手の甲に涼介が唇を押し当ててくる。
「…りょ…」
涼介が指や手に何度もキスを落として、愛おしげな様子に目が離せなくなってしまう。涼介、さっきもそんな顔でキスしていたの…?
「まだ環は俺がどれだけ環のことを好きか分かってないと思うよ。だから〝救う〟だなんて勘違いするんだ」
「…ごめん」
「いや、俺に原因があるんだ。環の昔話を聞いて俺が男としてアプローチすると怖がるかと思ってさ。
だから自分の感情を抑えるようにしてたんだけど、そのせいで環を迷わせたんだよな。悪かった」
「そんなふうに思ってくれてたんだ…涼介、やっぱり優しいね」
「優しくて不安にさせるくらいなら、これからは好き勝手するけど」
言いながら涼介は唇で指を挟む。淡い暖かさに全然知らない甘さが混ざり、これ以上は無理と首を振る。それでも涼介は手を離してくれず指に甘く歯を立てるから、しゃっくりみたいな声が出た。
「今あんまり可愛い顔しないで、帰れなくなりそう」
「もう帰っちゃうの!?」
思わず聞くと、「馬鹿だな」と笑われる。
「二人で帰るんだよ、俺達の家に。
これからはずっと一緒だ」
涼介の笑顔はずっと昔の懐かしい記憶に繋がってる。嬉しくて幸せでしょうがないのに涙ばっかり溢れてくるから、涼介の胸に顔を押し付けて隠し、ぎゅっーと背中を引き寄せた。