幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
「知らなかった」


涼介は自分でも分からない私を知ってくれてる。涼介の暖かな想いが積み重なった時間に、どれだけ感謝してもきっと足りない。


「ねえ、私ばっかりこんなに幸せで良いのかな。涼介は何でもわかってくれるのに…私は涼介に何がしてあげられる?」


運転中の涼介は前を向きながら、意外そうな様子で瞬きする。


「悪いけど、環より俺の方が幸せだよ。」


「どうして?」


「隣に環がいるから」


「っ!? そういうの、さらっと言わないでよ。」


「うーん…でもほら、環って妖精とか天使みたいだし」



妖精?天使?
褒め言葉ということを差し引いてもおかしい。


「どう見ても似ても似つかないでしょ!図体でっかくて体力有り余ってるもん!」


「ははっ。フィジカル強いのは確かだけど、そういうことじゃなくてさ。

会えない期間が長かったせいか、環はどこか遠くの…空想の生き物って感じがするんだよな。
だいたい、生身の人間にしては綺麗過ぎるだろ」


「!!?」


涼介ってこんなだったっけ?
さっきから真顔で訳の分からないことばかり。それとも…


「涼介って彼女にはそんなふうに甘いこと言ってベタ褒めするの…?」


「褒めたんじゃなくて、文句言ってるだけ。環がまるで自覚無いから困ってんだよ。誰にも見つからないように閉じ込めたくなるだろ」


「……な…」


計算なのか、それとも天然なのか。涼介に聞いても私の心臓がばくばくすることしか言ってくれない。友達の関係を止めた途端、びっくりするほど涼介が手強い。

< 142 / 146 >

この作品をシェア

pagetop