幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
その後は、涼介の態度に翻弄されている間に気が付けばマンションに戻っていた。
大きな窓のある開放的なリビングに、お揃いで買ったマグカップ。二度と戻ることはないと思っていたこの部屋に帰ってこられて、じんわりと嬉しさが込み上げる。
走って汗をかいたからお風呂に入りたいと言うと何故か驚いた顔をしていたけど、着替えは涼介の服を借してくれた。お茶を淹れていると、タオルで髪を拭いてくれる。
「ありがとう、短いから適当でも乾くよ…?」
「油断しきってシャンプーの匂いさせて、今まで通りに俺が我慢すると思ってる?」
「我慢って」
「…こういうこと」
首筋を噛まれて、後ろからお腹のあたりを抱き締められた。手に力が入らなくなって、空っぽのままのティーポットをカウンターに置くのが精一杯になる。
「ふぁっ…」
「知らないだろうけど、さっきから触れただけで熱っぽい顔するんだよ。そういうのヤバいから」
首筋と同じように耳朶も甘噛みされ、びくっとしてカウンターに手をつく。
「わっかんない…待っ
涼介と違って私はこういうの初心者だからっ…」
「俺が慣れてるように見える?」
「だって、前に彼女いたって…」
動けなくなった私に変わって、涼介がティーポットに茶葉とお湯を注いでくれた。
「俺がどれだけ環に心を奪われてるか知らないから、意味のない比較をするんだよ」
後ろから聞こえる、拗ねたような声。カップに注がれる紅茶から立ち上る湯気が頬を熱くする。
「…ずっと一方的に想ってるだけだったから、今は初めての感情ばかりで戸惑ってる。」