幼なじみの甘い牙に差し押さえられました

3 ハロウィン・コスチューム

朝起きると、山下さんからメッセージが届いている。

『アクセス数ヤバイ、想像以上』

メッセージにはリンクが付いていて、辿るとアンルージュのSNSに飛んだ。スカートにストッキングをはいた私の脚が映っている画像が目に入り、見てはいけない物を見てしまったような心地がする。


「こうして見ると、気持ち悪いな……」



”気持ち悪い”


何度も聞いてすっかり耳に慣れてしまったママの言葉。


初めて生理が来たときに漂白剤を手渡されて、凄く嫌そうな顔をしたママに『気持ち悪い』と言われたのが始まりだった。

それから『気持ち悪い』と言われることが増えて、だんだんとママとどう話したら良いのか分からなくなってしまったのだ。


私が男のような見た目で中身が女だから。

だから女性らしいママは私が気持ち悪い。そんなことは子供の頃からわかってた。



「分かってたはずなのに」



どうして昨日は馬鹿な真似をしてしまったんだろう。涼介が言う通り止めておけば良かった。

吐き気がするので朝食を取らずに出勤すると、胃が空っぽなせいか満員電車に酔ってしまった。


「なんか、ふらふらする…」


きちんと頭が働いていなかったようで、説明された通りにミーティングの準備をしたつもりがミスを連発している。


「河原くん、会議室の予約がエラーしてるよ。資料の準備もできてないし」


「本当に!?ごめんうっかりしてた」
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