幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
涼介が優しくて、私の想像なんか追いつかないくらい優しくて、思わず視界が揺れた。
「……ありがと」
「全部俺のためにやってることだから礼とか要らないよ。
可愛いって言った時に、環が笑ってくれたらもっと可愛いだろうなと思ってさ」
「そんなのキザ過ぎだよ」
泣きそうなのを誤魔化すように悪態をつく。
「だな、本当は可愛い服着た環を見たいっていうただの下心」
涼介の言葉を聞いて、料理のスパイスが口の中で弾けたように感じた。喉につかえないようにゆっくりと飲み込む。
そうか、私、嬉しいんだ。下心なんて言葉さえすごく嬉しいんだ……。
ぼんやりしてたら「どうした?」と声をかけられる。
「ちょっと…走りたい気分」
「馬鹿止めろ。その服で走る気か」
涼介にテーブルの下でブーツの足先をコツンとつつかれる。爪先で蹴り返したら膝と膝がぶつかった。
「あ……ごめ……」
「これくらい別に、
……って環、急にそういう顔するなよ」
少し触れただけで足が痺れたみたい。こんなのおかしい。涼介にはいっぱい抱き締められたりしたし、一度だけキスまでしてるし……。
思い出したら余計にどうしていいか分からなくなる。今までどうやって普通にしていられたんだろう。
「俺を煽ってる自覚ある?」
もう一度膝に涼介の脚が触れた。今度は偶然じゃない。
「……っ」
足先が交差したまま離れない。少しだけ浮いた爪先。悪戯っぽく笑った涼介は、ハロウィン用にアレンジされたお料理を口に運んだ。