幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
プレゼントに贈る下着を買いに来る男性のお客様なんてめったにいない。珍しいオーダーに販売員としてのスイッチが入る。


「ふふっ任せて。この環サマが最高のプレゼントを見立ててあげるから。

大事な人に贈るなら絶対ブラとパンツはダメだよ。ブラは機能性とサイズ調整が複雑すぎるから本人が選ばないと大抵失敗するの」


「なんだよ、急に元気になって」


呆気にとられている涼介を「予算は?」「相手の特徴は?」と質問攻めにする。


「喜ばれる物なら予算は何でも。贈る相手は、取りあえず下着が好きな奴だ」


予算限度なしで下着好き。難しくもワクワクするオーダーだ。もしその娘が本格的な下着マニアだとしたら本物志向の方が良いかもしれない。


こんなふうにプレゼントを選ばれて、贈り物の相手はとっても幸せだな。


「じゃあけっこうお値段張るけどシルクキャミソールかスリップはどう?

丈が長いのがスリップ、短いのがキャミソール。今は圧倒的にキャミソールがメジャーだけれどスカートをはくなら丈の長いスリップもぜひ試してみてほしいなぁ。

タイトスカートでもパンツのラインが出にくくなって便利だよ。涼介もその娘がパンツの線透けてたら困るでしょ!?」


「そうかもな。マシンガントークされても俺には下着のことなんてわからないけど」


涼介の顔が少しひきつってる。辺り一面にランジェリーが飾られた空間は、男の人には落ち着かないのかもしれない。その分私がしっかり選んであげないと。


「彼女に贈ると涼介にも良いことがあるんだよ、抱きしめたときにしゅるんとした肌触りが最高に気持ちいいんだから!

何ならそこのマネキンに抱きついて確かめてもいいよ」


「いやいい……。お前が手に持ってるの両方買うからもう黙れ」


涼介が微妙な表情で横を向いた。モテそうな雰囲気だから女の子の下着姿くらい見慣れてるような気がしたんだけど、意外な反応である。


どの色が良いか聞いたら「お前の好きな色でいい」と答えられたのでピンク系を二つ選んで丁寧にラッピングしてリボンをかける。しめてお値段43,200円の豪華なプレゼントの出来上がりだ。


「お買い上げありがとうございます。きっと喜んで貰えると思うよ」


「おう、サンキュ」と涼介は包みを受け取って、それをすぐまた私に返す。どういうことだろう。


「お前にやるよ、傘の礼だ」
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