家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました
扇がすっと奪われ、顔に影がかかったと思った瞬間に、強く白檀が香った。
扇は、広げられた状態のまま接近したふたりの顔の脇に添えられ、ロザリーの唇は、柔らかい彼のそれに塞がれた。驚いて目を見開いているうちに唇は離れ、照れたような彼の声が降ってくる。
「立場上、これからいろいろなことは起きると思うが。間違ってもペットとは思ってない。俺の好きはこういう意味だ」
「今の、……キスですか?」
「文句あるか」
「ないですけど。わ、わたし、初めてです。う、うわあ」
真っ赤になったロザリーにつられるように、ザックまでが顔を赤くしている。ロザリーがじっと見つめると、ザックは扇を顔の前にかざして自らの頬を隠した。
「全く、調子が狂う。……こんなの初めてだ。……さあ、そろそろ戻るぞロザリー。ルイス卿を説得しないと」
「待ってください。その。……顔が戻るまで。私、かなり時間かかりそうなんですけど」
あまりに初々しい反応に、ザックは内心もう一度キスをしてみたくてたまらなかったが、それではいつまでたっても食堂に戻れない。
彼女と並んで立ちながら「準備ができたら言え!」と告げ、ルイス卿を説得するためのいい文言をひたすらに考え続けた。
扇は、広げられた状態のまま接近したふたりの顔の脇に添えられ、ロザリーの唇は、柔らかい彼のそれに塞がれた。驚いて目を見開いているうちに唇は離れ、照れたような彼の声が降ってくる。
「立場上、これからいろいろなことは起きると思うが。間違ってもペットとは思ってない。俺の好きはこういう意味だ」
「今の、……キスですか?」
「文句あるか」
「ないですけど。わ、わたし、初めてです。う、うわあ」
真っ赤になったロザリーにつられるように、ザックまでが顔を赤くしている。ロザリーがじっと見つめると、ザックは扇を顔の前にかざして自らの頬を隠した。
「全く、調子が狂う。……こんなの初めてだ。……さあ、そろそろ戻るぞロザリー。ルイス卿を説得しないと」
「待ってください。その。……顔が戻るまで。私、かなり時間かかりそうなんですけど」
あまりに初々しい反応に、ザックは内心もう一度キスをしてみたくてたまらなかったが、それではいつまでたっても食堂に戻れない。
彼女と並んで立ちながら「準備ができたら言え!」と告げ、ルイス卿を説得するためのいい文言をひたすらに考え続けた。