大逆転ラヴァー
別に優しくしろとかそんな気持ち悪いことを言うつもりは更々ない。
ただ、全然可愛くない私でも仮にも女子だということを忘れてはならない。
その女子に、こんな重い鞄を持たせる男なんて腹立たしいけれど…
嫌がらせはこれだけではなく他にもある。
「重い。面倒くさい。もうやめる。自分で持てば?」
「あ?ふざけんな。昔、小柄だった俺にお馬さんさせたの誰だよ。くっそ重かったし」
「うっ…」
「そういやお姫様抱っこしろってどっかのバカに命令されたこともあったな。あのとき頑張ったけど全然持ち上がらなくて怒鳴られて泣かされて…」
「うっ…」
「ああ、俺ってなんて哀れな少年」
「はいはい。持ちます、持てばいいんでしょっ」
「そうそう。それでいいんだよ」
こうやって最低最悪な過去を蒸し返しては逆らえないようにして、勝ち誇ったようにほくそ笑む。
…お兄ちゃん、ごめんなさい。
と、顔を合わせるとキツイこと言っちゃうから心の中で謝っておいた。
お兄ちゃんは話を盛ってなんてなかった。
「早くしろ。このノロマ」
「くっ…」
だって、あんなに可愛かった夏樹は今や私を困らせて楽しむドS野郎なんだもん。
これは…時の流れを恐ろしく感じても無理はない。