大逆転ラヴァー




「なぁ、女子のブリブリした声って腹立つと思わねぇ?」

「あー、分かる分かる。耳障りすぎて私もいつもイライラしてるんだよね」

「だよな。あんなん可愛いと思う奴いんのかよ」

「ま、大体の男は思うんじゃない?」

「ふーん。俺には一生理解できねぇな」

「私も。理解したくもないけどね」



近くにあるベンチに腰掛け、共にクレープを頬張りながら進められていく何気ない会話。

男子と関わることすらなかった私が夏樹相手だとこんなにも会話が弾んでしまう。

なんだかんだ言ったって気心の知れた仲だから気を遣う必要もなくて楽だし。

それに…




「うわ、ダサっ」

「あ?何がだよ」

「ほっぺに思いっきりクリーム付いてるし。なにそれ、まさかウケ狙い?」

「と、当然だろ?わざとだよ、わざと」

「あははー。全然面白くないけど奢ってもらったお礼に一応笑っといてあげる」

「お前マジで可愛くねぇ…」




長時間一緒にいると気が緩んでくるのかこんな一面を見せることもあって。

偉そうな態度で生意気な口聞くわりに子供っぽいところもあるらしい。

そう考えると完全に可愛さが消えたわけではないのかもしれないけれど。



「彩芽」

「ん?…わっ」

「…ぷっ。お前もダセェ」



自分のクレープのクリームを人差し指でたっぷり掬い、当て付けみたいに私の頬に塗りたぐる夏樹は…

やっぱり全然可愛くない。
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