【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「…………そんなに、私は似ていますか」


長く、先々帝の御世より仕えてくれている人間達は皆、黎祥を見ると、先々帝の再来だとはしゃぐ。


父は、そんなに良い王だったのか。


「ええ。とても。けれど……そうね。貴方のそういう性格は、鳳雲(ホウウン)様に似ているかもしれません」


「鳳雲?」


聞き覚えのない名前に、黎祥が首を傾げる。


「祥星様の同母弟です。とても仲の良い、御兄弟だったのですよ」


昔を思い出すように、柳皇太后は目を細める。


その切なげな瞳には、親愛というよりも別の何かを感じられて。


(革命の際、そんな名前の人間はいなかった)


つまりは、とうの昔に亡くなっているか、どこかへ逃げ延びたかのどちらかであろう。


「……貴方は、どうか高星(コウセイ)と仲良くしてあげてくださいね」


「……」


「あの子は、一人ですから」


父と、その弟の仲の良かった姿を思い出したのか、柳皇太后は黎祥にそう願ってきた。


冷たい雰囲気の、黎祥と同じただの化け物だと思っていたが、意外と彼女も人の血の通った人間であるかもしれない。


―少なくとも、黎祥にそう願えるくらいには。


「高星はどこにいますか?」


「千露宮(センロキュウ)の内院の四阿だと。呼び寄せましょうか?」


「そうですね。時間があるので、高星と……雄星(ユウセイ)を呼んで貰えますか」


この二人の弟となら、関係は持てる。


調べた結果、特に害はなさそうだった。


雄星の母は嵐雪の叔母だし、高星の母はおらず、柳皇太后が養育しているからだ。


何か二人に怪しい動きがあれば、それは順家と柳家に反旗の疑いがあるということで明らかであるから、問題ない。


まだ、十五に満たぬ歳だ。


疑うのも、可哀想な話。


幸か不幸か、今日のすべきことは終わっているので。

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