【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「嵐雪」


「はい」


背後に控えていた、側近を見遣る。


「少しばかり、龍武殿(リュウブデン)で体を動かしてくる。何かあれば、そちらに」


龍武殿というのは、その名の通り、体を動かすためにある殿舎だ。


先帝の時代は本来の意味を忘れ、遊興に耽る場となっていたが……革命に際し、そこも平定した。


今は黎祥の良い、息抜きの場となりつつある。


「は。では、護衛を―……」


「案ずるな。どうせ、静苑がいる。そして、密偵もな」


黎祥がそう言うと、


「お言葉ですが、陛下」


嵐雪は急に真面目な顔になって。


「良いですか、陛下。高星様はともかく、雄星は大人しい性分にございます。余計な心労を、与えないでくださいね」


彼がこういうのにも、理由はある。


雄星は生まれた時に未熟だったため、病気に掛かりやすいのだ。


そして、母の血を受け継いでいるのか、気弱そうな雰囲気を持ったやつで、嵐雪からしたら従兄弟なのだが、年の差はかなりあり、嵐雪は自分の息子のように、とても可愛がっている。


「はいはい。お前の、身内びいきは相変わらずだな」


「身内びいきではありません。単純に、雄星が可愛いだけです」


黎祥が適当にあしらうと、そう怒ってきた嵐雪。


「……可愛いだけ、ね」


勿論、そんな感情、黎祥にはよくわからない。



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