【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「―あ、そうだ。嵐雪」


「はい、どうなされましたか?」


「例の渓和国の件、どうやって片した?」


渓和国というのは皇都の東の方にある国であり、自然に恵まれたところ。


二年前の革命の前後でさえ、皇宮などの腐敗に影響されず、穏やかな人柄で有名な黎祥の異母弟である、淑秋遠が治めている。


淑秋遠(シュク シュウエン)は、高淑太妃の息子であり、先々帝の第七公子。


何度か会ったが、先帝とは兄弟とは思えないほどに理知的で、この人が王になれば良かったのにと、何度か思った。


そもそも、黎祥の兄弟は姉妹も含めて全部で十七人兄弟なのだが、革命の際、処刑された(処刑した)のは、第一公子の先帝、第四公子の才伯(サイハク)とその母・程貴人、第二公女の美珠(ビジュ)とその母・折貴人、第五公女の愛媚(アイビ)とその母・刀貴人くらいなものだ。


そして、生後まもなく亡くなった第三公子を抜けば、あと十二人は残っているはずなのだが……柳皇太后の息子二人は行方不明なので、実質、今、生死がはっきりしているのは、十人だけ。


「秋遠殿が近日、こちらへいらっしゃるようです。そこで決議をしようかと」


「そうか」


「兄上にお会いするのが楽しみだと、仰っていました」


「……そうか」


秋遠は何も言わなかった。


黎祥が革命を起こして、兄を討ったことについて。


何も言わずに、『陛下』と、頭を垂れたから……何を考えているか分からない。


警戒せずにはいられないのだが、あの平和ボケな顔を見ていると、どうも、腹の探り合いができないのである。


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