【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
***


「―ねぇ、黎祥兄上、翠玉って知ってますか?」


二人を連れて、龍武殿に移動してから暫く。


それぞれ二人と手合わせをしてみたのだが、高星はすばしっこく、腕がいい。


一方で、雄星は策略家だ。


言うならば、高星は武官に、雄星は軍師に向いている。


今は休憩中だ。


三人で龍武殿の隅に腰を下ろしていると、高星がそう切り出した。


「翠玉?」


聞き覚えのない名前だ。


そもそも、後宮に近寄らないからなんだが。


「順内閣大学士のお身内の方なんですけど、後宮でとても大活躍している若い女性薬師!知識が豊富でね、とっても勉強になるんだ!」


勉強が苦手な高星がキラキラとした目で語るその女性について、


「翠玉の話は面白いよね。親王と言っても、僕達を区別しない。平等に、見てくれる。宦官だろうが、なんだろうが関係なく」


「そそ!翠玉の口癖、俺覚えちゃったよ」


生き生きと楽しそうに語る、二人。


「「命は全て平等だから、そこに身分は関係ない。命を無駄にする人は、許さない。死にたくないのなら、生きるために耐えろ」」


そして、口を揃えて放った台詞に、黎祥は既視感を覚える。


翠蓮が言っていた台詞に、似ている気がしたんだ。


「おまけにね、花にも詳しいんです。色んなことを教えてくれて、料理も得意で」


「剣術も嗜んでた!一度、手合わせしてもらったんだけど……すごく強いんだ」


「そう言えば、体を動かすことが好きだって言ってたよね。父君と母君には色んなことを教えてもらったって」


「蹴鞠(シュウキク)、剣術、棍術(コンジュツ)、氷嬉(スケ-ト)、水泳、氷牀(ソリ)、打毬(ポロ)、狩猟……凄いよね。なんでも出来るよ、本当に」


雄星がそうしみじみと呟いていると、


「龍武殿の上からは、何の殿舎が見えるんだろ?」


と、高星はふと気になったように、首を傾げた。


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