【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「謝ることは無い。わらわがどうして、そうしたと……そんなことが出来たと思う?」
「分かりません……」
分からない。
だって言うならば、黎祥と結凛をくっつけるってことでしょう?
どう考えても、翠蓮には出来ない。
「その御方は、大切な存在ではなかったのですか?」
翠蓮の問いに、柳皇太后は
「大切な存在に決まってる。その御方は、恋情で。親友は、友情で。どちらも大切なふたりだからこそ、わらわは幸せになって欲しかった。それに、その時点で、わらわの夫は祥星様だもの。それなら、二人に幸せになって欲しいと願うのが筋でしょう?」
と。
そういうものなんだろうか。
もし、黎祥の相手が結凛みたいな、翠蓮が知っている人なら、大切な人なら、こんなにも嫌だとは思わなかったのだろうか。
「……それで、後悔はしなかったのですか?」
黎祥の隣に、女性が……栄貴妃が立つ姿を想像した。
栄貴妃には兄という、好きな人がいることを知っていながら、こんなことを思う自分は最低だ。
それでも、きっと、栄貴妃は黎祥の味方になる。
何よりも強い、黎祥の味方に。
そうなった時、自分は栄貴妃を、黎祥を恨むだろうか。
いや、恐らくはそんなことにはならない。
だって、二人とも、翠蓮の"大切な人”だから。
だから、恨めない。
「…………していない、と言えば、嘘になるわ」
しばらく間を置いて、柳皇太后は呟いた。