【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
―もっと言うなら、兄が世話になっているし。
にっこり笑って言うと、
「…………公式の場では仕方ないけれど、今度からは、畏まらないで」
「え?」
「名前は仕方ないけど、翠蓮、いつまでも他人行儀なんだもの……友達として、接して欲しい……」
「……」
「ダメ、かしら?」
…………流石、黎祥の妹。
腹違いと言っても、美貌には変わりない。
「……っ、ダメじゃないです……」
いや、本当はダメなんだが。
今、灯蘭様が可愛いから仕方ない。
罪を問われたら、償えばいい。
……なんて、悠長に考える暇はないんだけど。
「約束ね?」
「は……うん」
また、灯蘭様曰くの他人行儀で対応しそうになり、言い換える。
すると、一段落着いたと思ったのか、
「―翠蓮様、儀式の件ですが……」
と、よもや偽名を使うことなく、順大学士が話しかけてきた。
「あ、はい」
急いで傍により、見せられた本を手に取る。
「儀式には、必ず、"女王の遺体”が必要なのですか?」
「ええ。既に、他国の皇族もこちらの儀式のため、向かっているという話です」
「それはますます、うかうかしている暇がなくなってきましたね……」
「そうなんです」
儀式。
どんどん、近づいてくる。
少なくとも、一連の毒騒ぎはある程度止み、翠蓮が受け持ってきた患者さん達も、どんどん回復している。
素晴らしいことであるが、儀式ができる環境になっても、儀式に必要なものがないのでは話にならない。