【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「何じゃ、懐かしい伝説を耳にしたな」
「伝説?」
「……『宵始伝』に記されています。"龍の涙”のことは……」
「ちょっ、姉上!そんな物陰じゃなく、表に出ましょう?」
見えたのは、雄星様。
「雄星、何しているの?」
「あ、灯蘭姉上……ちょっと、彩姫姉上が……」
「えっ、三の姉様、そこにいるの?」
(三の姉様?)
三の姉様、彩姫様と言えば……先々帝の第三皇女の事か!
先帝の子供は世間的には有耶無耶になっているし、
(麟麗様たちがいるけど、名前は公表されてなかったみたいだから、恐らく、嵐雪さん達も気づいてないし)
黎祥に、子供はいないから。
つまり、彩姫長公主は黎祥の姉君。
確か、母親は断罪された刀貴人で、妹である第五皇女の愛媚(アイビ)は、母親と共に死を賜った。
―密通の罪で。
刀家の全てが処刑台に登る中、父親である先々帝や、今は皇太后である柳皇后の決断で、彩姫様は処刑は免れたものの、後宮での彼女への扱いは冷たく、常にひとりだという。
最も、彩姫様自身が人前に出ることが苦手としており、母とは似ても似つかない美人であると有名なのだが。
無欲であり、いつも何かに怯えているから……後宮の人たちには煙たがられていたと聞いている。