【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……御前で失礼を。初めてお目にかかります。順翠玉……は、本当は偽名で、李翠蓮と申します。けれど、李将軍とは血の繋がりはありません。表向き、順翠玉と名乗っていますので、翠玉、と呼んでくださると、有難いです」
跪いて、彩姫様を見上げる。
怯えるように身を縮こまらせていた彼女は翠蓮の顔を見て、首を傾げた。
「貴女、本当に李将軍と無縁の方なのですか……?」
「え?」
急な問いに、目を丸くする。
「っ、も、申し訳ありませんっ!私……紹介は先程、順大学士からされた通りですわ。淑彩姫と申します」
深々と頭を下げられる。
思慮深く、美しい方だ。……本当に。
「……無縁ですわ。両親は既に亡く、二人の兄も両親のことについてはよく知りませんので、何も言えませんが」
少なくとも、一言も、両親はそういうことを話さなかった。
「そうですか……」
「…それが、どうか致しましたか?」
無言で事の成り行きを見守っているらしい、飛燕たち。
灯蘭様たちも黙って、翠蓮と彩姫様を眺めている。
御歳、二十五の彩姫様。
怯えていると聞いたが、堂々とした長公主様だ。
「昔……貴女と同じ、眼差しを持った方に会ったことがあるのです……いつだったか……その時、その御方には、既に妻子がおりました。殿方なんですけど……」
自分の記憶に自信なさげに、彼女の言葉は尻すぼみに。
「いつの話だったかしら……」
悩み始める彼女。
似ているというからには親類縁者かもしれないが、両親の家族構成は聞いたことがない。