【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「龍神様の守護があるから、戦争に勝てる?―馬鹿馬鹿しい。そんな存在が朧気なものに頼っても、現実は前に進まない。この毒の事件についても、そうよ。その小さな術士さんに話を聞けば、解決するかもしれない。でも、それで解決して……何が終わるの?こんなことに、終わりはないの。永遠に続くわ。ここは、後宮。落とし穴だらけの、魔窟なんだから」
小さい頃から、苦悩に満ちた日々だっただろう。
陛下の信頼が常に厚い、順家出身の母親の元に生まれ、小さな弟と母親を守るために、ずっと、虚勢を張ってきたことだろう。
先帝陛下は何故か、順家も目の敵にしていたそうだから。
「……その通りじゃ」
灯蘭様の話を黙って聞いていた飛燕が、一言。
「人の世の理は、人が決めるべきじゃよ。翠蓮」
「……」
「被害者が出る?―生きていくとは、そういうことじゃ。特に、この後宮で生き抜きたいのなら……自らの身は、自らで守らなければならぬ。人に甘えていても、何も始まらぬぞ」
飛燕はふと足を進めると、灯蘭様の前に来て。
「そなたは、何も間違っておらぬ。龍神は民の信仰で生きておるから、龍神を信仰するなとは言わぬが……見えざるものに頼っていては、人は進めぬからの」
「……」
「じゃが、翠蓮の言うことも最もじゃ」
飛燕は振り返ると、
「翠蓮、犯人を知りたいのだろう?なら、一番近くで見てみれば良い」
と、言った。