【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「……お前が、まさか、陛下と恋仲になっていたとはな」


小さく、そう漏らした祐鳳兄様。


「驚きました?」


「そりゃあ、もう。でも、灯蘭様の兄上だからな……お前の話からして、仕方ないことかもしれない」


「……」


後宮入りするにあたって、翠蓮は全ての内容を二人に話した。


最初は驚いていた二人だけど、それならば、尚更、翠蓮は後宮に入った方がいいと言われた。


そのことに関して、


『後宮はお前達も知っての通り、魔窟だ。私の妹も、そこから逃げるように行方を晦ました』


と、李将軍が兄ふたりを嗜めて。


「後宮に入っているからと言って、いいことはないと思う。特に、別れを選んだお前の立場なら」


「そうですね……」


それでも、外からわからぬのなら、中から見るしかないから。


「色んな話は聞いたが、お前は本当に独りでよく頑張った」


「慧秀兄様……」


「それでこそ、俺たちの妹だよ」


「祐鳳兄様……」


翠蓮は少し照れくさくなって、俯く。


誰にも認められなくていい。


家族は死んでしまったのだから、自分以外を頼りにするな。


ずっと自身に言い聞かせてきて、休める場所を手放して。


そして、結局、逃げたかったはずの鳥籠に、翠蓮は一月後、囚われる。



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