【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……今回の件に、宰相様まで協力して下さるそうなんです」
「聞いたよ。高瑞峰様だろう?お前、宰相様の妹君、高淑太妃のご子息である渓和王を救ったそうじゃないか」
何かと協力してくれると言った瞬間、宰相様に話をつけてくれた高淑太妃様。
『後宮は大変なところだけど、協力するから。今度は姉妹として、ここで会いましょう』
そう、見送ってくれた。
後宮において、上下関係を表す際、姉妹関係を結ぶことがある。
高淑太妃様を始め、救ってきた多くの人が……巡り巡って、それに関する人達が……翠蓮の力になってくれるというのだから、本当、運命というのは不思議なもの。
「……頑張らなくてはなりませんね」
覚悟を決めて、灰色の空を見上げた時。
「―翠蓮?」
鈴の鳴るような、可憐な声が耳をつく。
「あら、麟麗様。おはようございます」
「おはよう。朝、早いのね」
「フフッ、そうですか?それにしても、よく休めました?すいません、ボロ屋で……」
とてもじゃないけど、皇女を止める家では無い。
最も、知らずに皇帝陛下は住まわせたが。
「何言ってるの。後宮から連れ出してくれたこと、心より感謝しているわ。鈴華や双子もようやく、安心できたみたいで……本当に、感謝しても足りない。ありがとう、翠蓮」
今回、後宮から病を患ったという理由で去る際、侍女という名目で、四人の先帝の子女を翠蓮は連れ出した。
勿論、バレたら死罪である。
でも、あの後宮にいても、彼女達が生きられないのはわかっている事だったし、灯蘭様と栄貴妃に極秘で事情を話すと、賛成してくれたので、まぁ、いいとしよう。