【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「気にしないでください!これからは、幸せに過ごせますよ。私はまた後宮に戻りますが……ここにいる、信頼出来る幼なじみに頼んでいきますから。文も時々送ります。極秘で」
「フフッ、色んな罪を犯しちゃってるわね。私たち」
「ね」
生きながらに、身体を割かれても文句言えないわ。
想像すると恐ろしかったはずの未来も、今や、怖くない。
多分、翠蓮の中で何かが固まったのだ。
「その時は、私もお供するから」
「え?」
「あら、翠蓮だけに罪は負わせないわよ。双子は無理でも……私は、いえ、鈴華も付き従いそうね。ちゃんと、罪を償います」
「罪って……麟麗様たちは、何もしてないでしょう」
翠蓮は、沢山やったが。
すると、彼女は笑って。
「私もたくさん、罪は犯したわ。目の前でお母様が兄弟を殺しているのを黙って見ていたこともあるし、何より、革命から二年もの間、皇帝陛下を謀っていたんだもの」
麟麗様の表情は晴れやかで、とても、自分の恐ろしい未来について語っている雰囲気ではなく。
「死ぬことも、何もかも、もう、驚く程に怖くないの。不思議でしょう?翠蓮に出会って、色んなことを経験して、私、強くなれたのかな」
なんて。
きっと、ずっと、麟麗様は強かった。
あの敵だらけの牢獄の中で、ずっと生きてきたんだ。
自分よりも弱い存在を、守りながら。
そんな彼女が弱いはずないし、もっと、肩の力が抜いて、これからは平穏な人生を歩んで欲しいと思う。