【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「なんだ?何か、問題でも……」
「いや、だって、栄将軍は結婚していますし」
「…………………………………え?」
「だから、栄将軍には奥様がいらっしゃいます。それはもう、深いご寵愛ぶりで……確か、幻華(ゲンカ)様と仰いましたか。栄家の邸宅から引き離し、別の邸宅に夫婦で住むほど、大事に慈しんでおられます」
「聞いたことないな……」
「革命後、間近の話です。暴政のせいで、陥れられた朱家の娘とか」
「朱家……あの、一家、公開処刑のか」
「そうですね。幻華様が戦火から逃れることもせずに、幼い妹を探していらして……その時に出会われた、とか」
「……よく知ってるな、お前」
「情報は常に更新してないと、あなたの秘書など務めていけませんから」
朱家というのは、書生の家であった。
聞く話しかないが、栄家と並ぶほどに栄華を極めており、先帝の要求で娘を求められたのを拒んだのがきっかけで、そんなことになってしまったのだろうと言われるほど、忠義心の厚い一家だったそうだ。
幸か不幸か、全員、斬首刑。
凌遅刑―生きながらにして、全身の皮を剥ぐ刑罰。極刑の中では、一番、罪が重いものに課せられた―などではなかったことを、喜ぶべきなのか。
とりあえず、先帝はいけ好かない。
あの時、首をはねとばすのではなく、凌遅刑のやり方で殺してやればよかったと思うほど。