【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「じゃあ聞くが、奥方は宮刑を受けてないだろうな?」
宮刑……それは、要するに、それぞれがそれぞれであるためのものを失う刑のことである。
十五以下の子女であれば、宮刑で済む族滅。
それ以外は、その罪に合わせて変わるのだが、その奥方がもし、宮刑を受けていないのなら―静苑の歳も考えて―上手いこと、逃げ延びたということだろう。
宮刑を受けて失った男は宦官となり、宮廷に入ってくる。
自ら志願して、宦官となる者もいるが……何にせよ、生涯、彼らは騾馬(ラバ)と罵られ、嫌われる。
女も同じで、女は子を成せない身体となる。
劇薬を口にすることで、そういう体にしてしまうのだ。
最も、その劇薬による作用に苦しんでいるうちに死ぬ者も多いと聞くが。
「御子は授かっていませんが、宮刑は受けていないみたいですよ。もしかしたら、近いうちに授かるかもしれませんね」
嵐雪は、静苑のことをどう思っているのだろうか。
仮にも、栄家は順家にとっては害のある家だ。
長年、権力争いを繰り広げてきたんだから。
それでも、普通に話している時が見受けられるということは、そこまで仲は悪くないのだろう。