【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「子、か……」


「陛下の後継は、今探しておりますが……とりあえず、近いうちに再び、数名の妃が入宮されます。頭の隅に置いておいてくださいませ」


「……それで、誰かを寵愛しなければならないのか?」


正直なところ、後宮の妃とは誰とも、閨を共にしたことは無い。


栄貴妃は表向きの寵姫といえど、手はつけてないし。


だから、栄家には喜んでいるところ悪いが、栄家出身の人間が皇后となることは無い。


「……でも、いつかはなぁ」


「え?」


「皇后の話だ。いつかは、自分の隣に立つものを見据えなければならない」


下町で翠蓮と別れて、一年。


翠蓮への想いは絶えずとも、皇帝としての生き方は多方、理解したつもりだ。


父の話を聞いて、母の残したものを見て、自分はどうあるべきなのか……それを見つけることできた気がする。


愛することは出来なくても、信頼出来る誰かを。


皇太后を信頼した、先々帝のように……自分の隣に立つものを、そして、自分が死んだ後にも、国を任せられるものを、皇后として尊重しようと思う。


「……急がなくていいですよ」


「……」


「多くの妃がいます。ゆっくり、見定めなさいませ」


嵐雪の言葉に、黎祥は何も言えなかった。


そんなことを言われるとは思っておらず、翠蓮を妻にすることを勧めてきていた嵐雪はなりを潜めていた。


「どのような選択をなさっても、私どもは貴方に仕えます」


嵐雪がそう言って微笑んだ時、叩かれた戸。


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