【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「―お待たせ致しました」


軽く一礼して、入ってきた静苑。


彼の後ろには、訝しげな表情の青年。


「―練子龍(レン シリュウ)と申します。御拝謁を賜り、恐悦至極の……」


「挨拶は良い。立て」


挨拶を遮り、子龍を立たせる。


なるほど。あの、練家の子息ながらにして、見事な顔つきだ。


一度、呼び出したことはあるが……あの時は、こんなにもじっくりと顔を見たことは無かったからな。


「その……本日はどのようなご要件でしょうか?」


冷酷非道で名の通る黎祥を前にしても怯える節もない、練子龍はただ、ただ、不思議そうで。


「少し、引き取ってもらいたいじゃじゃ馬がいてな」


「馬、ですか……」


「そなたは、馬の名手と聞く。―任せても良いか?」


練子龍―革命の際、共に戦旗を翻してくれた若者。


騎馬の名手であり、その名は轟くほど。


―それは、かつての練将軍のように。


黎祥の問いかけに、一度、間を置いた子龍は面を伏せて。


「私で良ければ」


と、一言。


その一言に、黎祥は笑みを深めて。


「では、そなたに任ぜよう。最初に言っておくが、生涯を貫いてもらうぞ?返品は不可だからな」


「??、はあ……」


不思議そうな彼に一枚の書類を差し出すと、目を見開いて。


「陛下っ、これは―……!」


「皇家で一番の、じゃじゃ馬だ。よろしく頼む」


「っ、御意」


驚きながらも、深く拝礼をする彼。


その瞳には、涙が浮かんでいて。



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