【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
***
その場所は、後宮の深まったところにある。
滅多に足を踏み入れないそこに足を踏み入れれば、周囲の人間が沸き立ったのを肌で感じた。
「……これは、陛下。どうなされました?」
後宮の女官長に尋ねられ、黎祥は事のあらましを話した。
彼女は母と黎祥が辺境に飛ばされてからも、親身に世話に徹してくれたため、女官長に任命したのだ。
常に冷静で、表情が面に表れにくい彼女だが、信頼はしている。
言うならば、後宮内の間諜(スパイ)である。
「女官長、内楽堂に行こうと思うのだが」
「内楽堂へ?」
「構わないだろうか」
女官長は変わり映えしない表情のまま、
「……ええ、まぁ、大丈夫でしょう」
間を置いて、曖昧に頷いた。
「"あの方”の様子が、少しおかしいですが……行動は移さないでしょう。念の為、明景を連れて行ってくださいませ」
女官長に声かけられて、顔を出したのは……。
「お前は、栄貴妃の宮に勤めていなかったか?」
見た事のある顔だった。
「ええ。栄貴妃様にお世話になっていたのですが……」
「私が腕を信頼して、買ったのです。私の右腕ですので、ご心配なく」
違和感の感じる、明景という女の表情。
笑っているのに、笑っているように見えない。
とりあえず、輿に乗り、後宮の様子を中から眺める。
(……明景の、腕を……)
買った。だから、昇進させた。
そんなことは、後宮内で良くあることだ。
黎祥が気になっているのは、それ以外の……。
その場所は、後宮の深まったところにある。
滅多に足を踏み入れないそこに足を踏み入れれば、周囲の人間が沸き立ったのを肌で感じた。
「……これは、陛下。どうなされました?」
後宮の女官長に尋ねられ、黎祥は事のあらましを話した。
彼女は母と黎祥が辺境に飛ばされてからも、親身に世話に徹してくれたため、女官長に任命したのだ。
常に冷静で、表情が面に表れにくい彼女だが、信頼はしている。
言うならば、後宮内の間諜(スパイ)である。
「女官長、内楽堂に行こうと思うのだが」
「内楽堂へ?」
「構わないだろうか」
女官長は変わり映えしない表情のまま、
「……ええ、まぁ、大丈夫でしょう」
間を置いて、曖昧に頷いた。
「"あの方”の様子が、少しおかしいですが……行動は移さないでしょう。念の為、明景を連れて行ってくださいませ」
女官長に声かけられて、顔を出したのは……。
「お前は、栄貴妃の宮に勤めていなかったか?」
見た事のある顔だった。
「ええ。栄貴妃様にお世話になっていたのですが……」
「私が腕を信頼して、買ったのです。私の右腕ですので、ご心配なく」
違和感の感じる、明景という女の表情。
笑っているのに、笑っているように見えない。
とりあえず、輿に乗り、後宮の様子を中から眺める。
(……明景の、腕を……)
買った。だから、昇進させた。
そんなことは、後宮内で良くあることだ。
黎祥が気になっているのは、それ以外の……。