【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「四の姉上―鏡佳姉上なら、中にいますよ。でも、兄上と義母上が近づくのはダメなので、呼んできますね」


内楽堂は、病を癒す場所。


そういう名目でも、ここに入ってしまったら、死ぬまで絶対に出られないといわれるほどのあばら家だった。


それなのに今は、まるで普通の家のようにそこにある。


誰が、ここまで綺麗にしたのか。


綺麗だけど……それでも、病持ちがいる所なのだから、皇帝である黎祥や皇太后は一定距離内では近づけないというのが、難儀である。


「綺麗な状態に戻ったの……」


「戻った?」


「先々帝時代の姿じゃ。懐かしい」


そう言って、目を細める皇太后をみて、黎祥は再び、内楽堂を見上げた。


ひび割れた壁のもとにいた異臭を放つ人はなく、


ただ、普通に収容された患者達が笑い合っている。


自分の死に怯えて、絶望していた姿はなく、誰もが希望をもって生きようとする姿は、黎祥にとって新鮮で。


「―兄上ー!」


「ちょっ……何なのよ、高星……って、陛下の方かい!」


高星に引きずられながら現れた鏡佳姉上は嫌な顔を隠さず、思いっきり突っ込みを入れた後、潔く拝礼する。


姉のこういう正直さや潔さは、嫌いではない。


「本日は、どのようなご用件でしょう」


その口上に、少し微笑んで。


「今日は、というより、ずっと逃げ回ってくださって、ありがとうございました。姉上」


嫌味たっぷりで言うと、


「……結婚はしないわよ」


と、睨まれて。



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