【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「虐めて……え?これ、僕ら虐めてる?」


「そうなるのかな……?」


「李妃様が辛そうな顔をしているじゃない。補佐をするなら、心の面もでしょ」


現れたふたりの女性。


一人の女性は怜世さんと桂鳳さんに詰め寄り、


「大丈夫ですか……?」


もう一人の女性は、翠蓮の様子を心配する。


大丈夫。


彼らの言葉に傷ついたわけじゃない。


自分の選んだ道の重さを、当日になって実感しただけなの。


「っ、……翠蓮!私、事情はわからないけど……約束したからには、翠蓮の全面的な味方だからね!」


翠蓮の心がしょげてしまったのを見て、驚きつつも、不器用に、杏果まで必死に慰めてくる。


この道を選んだのは、翠蓮だ。


頷いたのも、頑張ってきたのも翠蓮自身。


朝早いせいか、少し薄暗い周囲を見渡して。


「―っ、よし」


翠蓮は自分の頬を叩く。


「ありがと!杏果」


笑顔を見せると、少しほっとした顔。


「もうっ、急に落ちないでよ。……し、心配するから……」


すぐに怒ってきて、微笑すると、付け加えられた言葉。


素直じゃない彼女の優しさに、本当の笑顔が漏れる。

< 396 / 960 >

この作品をシェア

pagetop