【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「虐めて……え?これ、僕ら虐めてる?」
「そうなるのかな……?」
「李妃様が辛そうな顔をしているじゃない。補佐をするなら、心の面もでしょ」
現れたふたりの女性。
一人の女性は怜世さんと桂鳳さんに詰め寄り、
「大丈夫ですか……?」
もう一人の女性は、翠蓮の様子を心配する。
大丈夫。
彼らの言葉に傷ついたわけじゃない。
自分の選んだ道の重さを、当日になって実感しただけなの。
「っ、……翠蓮!私、事情はわからないけど……約束したからには、翠蓮の全面的な味方だからね!」
翠蓮の心がしょげてしまったのを見て、驚きつつも、不器用に、杏果まで必死に慰めてくる。
この道を選んだのは、翠蓮だ。
頷いたのも、頑張ってきたのも翠蓮自身。
朝早いせいか、少し薄暗い周囲を見渡して。
「―っ、よし」
翠蓮は自分の頬を叩く。
「ありがと!杏果」
笑顔を見せると、少しほっとした顔。
「もうっ、急に落ちないでよ。……し、心配するから……」
すぐに怒ってきて、微笑すると、付け加えられた言葉。
素直じゃない彼女の優しさに、本当の笑顔が漏れる。