【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「あの……翠蓮殿、申し訳ありませんでした」
「え?」
「何か、気に触るようなことを……」
「―ああ!いえいえ!!」
全力で否定し、翠蓮は心を抑え込む。
こちらこそ、申し訳ない。
翠蓮の心が弱いばかりに、彼らには迷惑をかけてしまった。
「少し…………陛下の妃と言われて、動揺しただけです」
御心配お掛けしてすいません、と、翠蓮は頭を下げる。
後宮に入って、黎祥に会ったら、言う台詞。
それすらの台本を作っているんだから、今更、逃げられない。
逃げる、つもりもない。
愛を得られなくても、自分が選んだ道の正しい未来は、この国の民の笑顔が守られること。
『私ね、ずーっと、ずっと、この国のみんなには笑っていて欲しいと思うわ!自由に生きて、自由に恋して、自分の人生に大満足して、死んでいくの!幸せな一生って言うの?この国に足を踏み入れた人達、皆に"幸せになる権利”をあげられるような、そんな国を作りたいわ!!』
―そんな声が、最近、ずっと聞こえる。
そして、寝れば見る。
誰かの、複数人の、絶望と悲嘆に暮れた泣き声。
お陰様で、少し顔色が悪いみたいだけど……そこは、化粧で隠してね。