【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「翠蓮、僕らのことを嫌いになるかな……」
剣と弓をそれぞれ収め、呟く。
「まさか」
そんなふたりの不安を笑い飛ばした青年。
「翠蓮を守りたいのなら、陛下を守ろ?僕が人間界の決まり事は教えてあげるから」
しゃがみこんで、そう言うと。
「分かった!」
「陛下……この国の王のことだな!!」
大きく頷いて、
「我の名は、龍翔。翠蓮の為に、お前を守らせてもらう!」
「僕もだ。……翠蓮が喜ぶのなら、不本意だが仕方がない。我の名は、黎明(レイメイ)だ。よろしく頼むぞ、人の子」
そう、名乗られる。
(いや、名乗られてもなぁ……)
記憶力はいい方だが、最近、色んな人物がごちゃごちゃと問題を起こしてくれて、訳分からん。
とりあえず、この少年ふたりは人間じゃないんだろうけど……。
「チッ、志輝の言うことはよく聞いて……」
(志輝?)
「おばさんの言うことは聞かないの」
「あたしがババアなら、お前らは!?」
「僕達は、少年です〜」
どこかで、聞き覚えのある名前。
―まあ、珍しい名前でもないが。
「にしても、志輝、お前、あそこから……」
「ああ、うん。飛龍に事情を聞いたよ。気に病ませていたんだね。もう大丈夫だから、紫艶、君も前に進もう」
「だけど……っ」
「大丈夫。二人はまた、僕の前に現れてくれた。もう、孤独じゃないよ」
紫艶と呼んだ女の手を握り、微笑んだ志輝という青年は黎祥の方を見ると、
「―久しぶり」
と、声をかけてきて。